【遺言作成, 電子化, リモート】令和7年秋スタート!公正証書遺言が劇的に便利になる新方式を徹底解説

令和7年秋、公証人法が改正され(令和5年法律第53号)、長らく紙で運用されてきた「公正証書遺言」が、いよいよデジタル時代に対応します。これにより、遺言作成のハードルが下がり、特に遠方にお住まいの方や、お体の状況で公証役場に赴くことが困難な方々にとって、劇的な利便性の向上が見込まれます。

今回は、この法改正の肝である「電子化」と「リモート作成」の具体的な内容を、詳細に解説いたします。

遺言手続きの常識が変わる!公正証書の「電子化」とは

公証人法の改正により、公正証書の作成方法に大きな変更が加えられます。

原本は紙からPDFファイルへ

原則として、公正証書は電磁的記録(電子データ)で作成されることになります。従来の紙の書面が原本とされていましたが、今後はMicrosoft Wordで作成したものをPDFファイルにしたデータが「原本」となります。

ただし、電磁的記録化が困難な資料を添付する場合や、法律上、嘱託人(依頼者)が公正証書に署名・押印することが必要な「保証意思宣明公正証書」を作成する場合は、例外的に書面で作成されます。

署名・押印は「電子サイン」と「電子署名」へ

これまでの手書きによる署名や押印も、デジタル化されます。

  • 列席者の電子サイン:嘱託人、証人、通訳人などの列席者は、タッチペンと感知式ディスプレイ、またはペンタブレットを用いて、記載した氏名をPDFに埋め込む「電子サイン」を行います。
  • 公証人の電子署名:公証人は、電子サインに加え、感触証明書をPDFに埋め込む「電子署名」を行います。電子署名が行われた後、データに変更があった場合はその旨が表示されるため、データの改ざんの有無を確認することが可能です。

この電子化によって、原本が電磁的記録となるため、電子正本や電子謄本の交付も可能になります。もちろん、従来通りの紙の正本・謄本の交付も引き続き可能です。

遺言作成しやすくなる「リモート方式」について

新しい方式として最も注目すべきは、公証役場での対面作成や出張作成に加え、「リモートでの作成」が追加された点です。

ウェブ会議システム(Teams)を用いたリモート方式は、映像と音声の送受信により、公証人と列席者が相互に状態を認識しながら通話できる方法です。

リモート方式が認められるための厳格な要件

リモート方式は、嘱託人の利便性向上のためのものですが、公正証書の持つ「紛争予防機能」を損なわないよう、以下の4つの要件が定められています。

  1. 嘱託人または嘱託代理人からの申し出があること
  2. 他の嘱託人の異議がないこと:公正証書の紛争予防機能に照らし、他の嘱託人に異議がある手続きの実施は不相当とされるためです。ただし、通訳人や立会人(証人)については、その支援・立会いを必要とする嘱託人の意向を重視するため、他の嘱託人の異議の有無は問われません。
  3. 公証人が相当と認めること:嘱託人の真意の確認が困難であるなど、リモート方式の利用が不相当な場合があるため、公証人が必要性(公証役場に赴くことが困難な場合など)と許容性(本人確認、真意確認、判断能力の確認の難易度など)を総合的に考慮して判断します。
  4. 法令上許容されていること:たとえば、保証意思宣明公正証書はリモート方式の対象外とされています。

リモート方式が認められる具体的なケース(必要性)

公証役場に赴くことが困難な場合の具体例として、以下の事情が挙げられています。

  • 心身の状況や地理的事情による公証役場へのアクセス困難
  • 列席者多数による日程調整の困難
  • 感染症予防等による制限
  • DVなど、嘱託人相互の関係による同席の困難

これらの理由がある場合、自宅など公証役場外から、ご自身のパソコン等でウェブ会議に参加することが可能です。

リモート作成に必要な準備

対面方式であれば特別な準備は不要ですが、リモート方式で作成する場合、列席者側で以下の機材を用意する必要があります。

  • パソコン:画面共有が可能なもの。画面共有ができないスマートフォンやタブレットは不可です。
  • ウェブカメラ、マイク、スピーカー等:映像の撮影と音声の送受信のため。パソコン内蔵のものでも構いません。
  • タッチ入力可能なディスプレイまたはペンタブレット:電子サインを行うために使用します。
  • メールアドレス:Web招待メールや電子サイン依頼メールを受信するため。

リモート作成手続きの流れ(遺言の電子サイン)

リモートでの作成手続きは、Teams会議形式で進行します。

  1. 事前準備:リモート方式の利用を申し出た後、公証人からWeb会議への招待メールが送付されます。
  2. 本人確認:会議開始後、公証人は列席者に写真付き身分証明書を画面に表示させ、本人確認を行います。その画像はキャプチャして保存されます。
  3. 意思確認と案文確認:公証人は遺言書案を画面共有し、それを読み上げます。列席者は、画面に表示された案文を閲覧しながら内容を確認します。
  4. 電子サイン:案文確認後、公証人が電子サインアプリを起動します。列席者は、電子サイン依頼メールを開いて、画面共有しながら(操作している人の画面が全員に表示されます)、タッチペンで署名用のウィンドウにサインを行います。
  5. 完成:列席者全員の電子サインが完了した後、公証人が電子サイン及び電子署名を行うことで、公正証書原本が完成し、システムに登録されます。
  6. 電子正本等の交付:完成後、電子正本等がダウンロード用サイトにアップロードされ、アクセス用パスワードがTeamsのチャット等で通知され、ダウンロードによって受け取ります。

最終意思実現のために:公証人法改正による電子化とリモート作成を活用しましょう

公証人法改正による電子化とリモート作成の導入は、遺言作成の利便性を飛躍的に高めます。特に、体調や地理的な制約から手続きを諦めていた方々にとって、これは大きなチャンスです。

遺言は、ご自身の最終意思を確実に残すための最も強力な手段です。判断能力が確かで、心身の状態が良い「今」こそ、この新しい制度を活用し、確実に法的な効力が認められる公正証書遺言を作成してください。

遺言作成に関する具体的なご相談、新しいリモート方式の利用可能性の検討については、ひなが行政書士事務所「https://hinaga-itou.com/」からお気軽にお問い合わせください。

電子化の理解度チェック!

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公正証書の電子化は便利ですが、機材の準備や厳格な要件など、専門的な判断が必要な場面が多くあります。

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