![遺言等公正証書 作成の知識と文例(麻生興太郎著、日本法令、令和5年5月10日)、相続実務に役立つ戸籍の読み方・調べ方、行政書士のための遺言・相続実務家養成講座 ・相続診断士基本テキスト(2024~2025年版)、【ケース別】遺言書作成のポイントとモデル文例(編著 山田知司、令和4年12月9日)、行政書士のための相続実務マニュアル(初見 孝著、三省堂書店/創英社、令和4年9月30日)、新基本法コンメンタール 相続[第2版]、自動車登録入門(第2版)](https://hinaga-itou.blog/wp-content/uploads/2025/02/図84-1024x423.png)
予備的遺言(自筆証書遺言書)の書き方
遺言書
遺言者 伊藤太郎は次のとおり遺言する。
1 私は、その有する一切の財産を、私の妻伊藤花子(生年月日)に相続させる。ただし、上記妻伊藤花子が私より先又は私と同時に死亡した場合は、その有する一切の財産を、私の長男伊藤一郎(生年月日)に相続させる。
※遺言者と相続あるいは遺贈する相手の年齢が近い場合には上記のような予備的遺言をおすすめします。
親子間の予備的遺言(自筆証書遺言書)の書き方
遺言書
遺言者 伊藤太郎は次のとおり遺言する。
1 私は、その有する一切の財産を、私の長男伊藤一郎(生年月日)に相続させる。ただし、上記長男伊藤一郎が私より先又は私と同時に死亡した場合は、その有する一切の財産を、上記長男の長男伊藤二郎(生年月日)に相続させる。
※長男は不治の病で入院中のため早晩亡くなることが予想される場合には上記のような予備的遺言をおすすめします。或いは、このような予備的遺言を作成せずに、「長男の長男(孫)に、その有する一切の財産を包括して遺贈する。」という遺言を作成します。
夫婦相互遺言と予備的遺言(自筆証書遺言)の書き方
夫の自筆証書遺言
遺言書
遺言者 伊藤太郎は次のとおり遺言する。
1 私は、その有する一切の財産を、私の妻伊藤花子(生年月日)に相続させる。ただし、上記妻伊藤花子が私より先又は私と同時に死亡した場合は、その有する一切の財産を、私の長男伊藤一郎(生年月日)に相続させる。
妻の自筆証書遺言
遺言書
遺言者 伊藤花子は次のとおり遺言する。
1 私は、その有する一切の財産を、私の夫伊藤太郎(生年月日)に相続させる。ただし、上記夫伊藤太郎が私より先又は私と同時に死亡した場合は、その有する一切の財産を、私の長男伊藤一郎(生年月日)に相続させる。
※「その有する一切の財産」と記載してあれば、遺言者の個々の財産を全て指すものと解されます。例えば夫が亡くなり、夫の財産を妻が相続する前に妻が亡くなったとしても、「その有する一切の財産」と記載してあれば相続前の夫の財産も妻の財産に含まれると解されます。
共同遺言の禁止
民法975条は、「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。」と規定しています。従って、上記の夫婦相互遺言を同一の遺言書で遺言した場合は無効になります。そのため、夫婦相互遺言は、それぞれ別々に作成する必要があります。
遺言書を作成しても、ご自身の財産をどのように使用、処分するかは自由です
遺言書を作成すると、その遺言と矛盾する財産処分はできなくなると思い込んでいる方もいらっしゃいますが、遺言者の方がご自身の財産をどのように使用、処分するかは自由です。遺言書の内容に縛られることはありません。例えば、「長男に土地・建物を相続させる」と遺言書に記載しても、土地・建物を売却することは可能です。この場合、「長男に土地・建物を相続させる」という遺言が撤回されて、遺言執行ができなくなるだけです。遺言書を作成されることのデメリットは一切ありませんので、ご安心願います。
自筆証書遺言の関連記事
・自筆証書遺言の長所、短所、法的要件は別記事「自筆証書遺言について」を参照願います。
・自筆証書遺言の保管申請制度の利用をお考えの方は、別記事「自筆証書遺言の保管申請制度の利用方法について説明します!」を参照願います。
1 自筆証書遺言書の書き方(基本型、遺産の全部を相続させる、遺産の全部を包括して遺贈する遺言)
4 一筆の土地を具体的に分割して相続させる自筆証書遺言書の書き方
6 増築部分が未登記の建物を相続させる自筆証書遺言書の書き方
9 将来相続によって取得する財産を遺言で相続させる場合の自筆証書遺言書の書き方
参考文献
・自筆証書遺言書保管制度のご案内(法務省民事局、令和5年1月作成)
・遺言等公正証書 作成の知識と文例(麻生興太郎著、日本法令、令和5年5月10日)
・行政書士のための相続実務マニュアル(初見 孝著、三省堂書店/創英社、令和4年9月30日)