
一筆の土地を具体的に分割して相続させる自筆証書遺言書の書き方
遺言書
遺言者 伊藤太郎は次のとおり遺言する。
1 私は、その有する別紙1の土地(以下「本件土地」という)を、別添図面のA点とB点を直線で結んだ線(以下「分割線」という)で分筆した上で、本件土地のうち分割線の東側部分を、私の長男伊藤一郎(生年月日)に相続させ、本件土地のうち分割線の西側部分を、私の二男伊藤二郎(生年月日)に相続させる。
【別紙1の土地】
所在、地番等により土地を特定できれば、登記事項証明書(登記簿謄本)の一部分や縮小したコピー、登記情報提供サービスを利用した印刷物を財産目録として添付することができます。
土地が未登記でも公的機関発行の証明書、固定資産課税評価証明書のコピーを添付することができます。
自書によらない財産目録を添付する場合は、そのページごとに署名し、押印する必要があります。
署名は自書する必要があります。左上に「別紙1」と記載します。
分筆登記について
遺言者の方が土地の一部を分割して相続させる場合は、相続開始後の手続きを簡便にするために、土地の分筆登記をして遺言をするのが望ましいです。
しかし、分筆登記により相続人に気付かれることを避けたい場合は、上記例のように測量図の正確な図面に分割線を記入して、遺言書の本文に添付すれば、遺言執行の登記手続は円滑に進みます。
相続人には「相続させる」と明確に記載します
「取得させる」「承継させる」「譲る」「託す」「任せる」「あげる」「与える」などの曖昧な表現は避けましょう。
また、「包括して相続させる」と記載すると包括遺贈と混同される恐れがあるので、このような記載は避けましょう。
遺言書を作成しても、ご自身の財産をどのように使用、処分するかは自由です
遺言書を作成すると、その遺言と矛盾する財産処分はできなくなると思い込んでいる方もいらっしゃいますが、遺言者の方がご自身の財産をどのように使用、処分するかは自由です。
遺言書の内容に縛られることはありません。
例えば、「長男に土地・建物を相続させる」と遺言書に記載しても、土地・建物を売却することは可能です。
この場合、「長男に土地・建物を相続させる」という遺言が撤回されて、遺言執行ができなくなるだけです。
遺言書を作成されることのデメリットは一切ありませんので、ご安心願います。
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・1 自筆証書遺言書の書き方(基本型、遺産の全部を相続させる、遺産の全部を包括して遺贈する遺言)
・3 遺産の一部を妻と長男に相続させる自筆証書遺言書の書き方
・6 増築部分が未登記の建物を相続させる自筆証書遺言書の書き方
参考文献
・自筆証書遺言書保管制度のご案内(法務省民事局、令和5年1月作成)
・遺言等公正証書 作成の知識と文例(麻生興太郎著、日本法令、令和5年5月10日)
・行政書士のための相続実務マニュアル(初見 孝著、三省堂書店/創英社、令和4年9月30日)