遺言等公正証書 作成の知識と文例(麻生興太郎著、日本法令、令和5年5月10日)、相続実務に役立つ戸籍の読み方・調べ方、行政書士のための遺言・相続実務家養成講座 ・相続診断士基本テキスト(2024~2025年版) ・【ケース別】遺言書作成のポイントとモデル文例(編著 山田知司、令和4年12月9日) ・行政書士のための相続実務マニュアル(初見 孝著、三省堂書店/創英社、令和4年9月30日)

遺産の一部を妻と長男に相続させる自筆証書遺言書の書き方

遺言書

遺言者 伊藤太郎は次のとおり遺言する。

1 私は、その有する不動産の一切を、私の妻伊藤花子(生年月日)に相続させる。

2 私は、その有する預貯金等金融資産の一切を、私の長男伊藤一郎(生年月日)に相続させる。

遺産の一部である「不動産等の一切を相続させる」、「預貯金等金融資産の一切を、相続させる」記載方法について

遺産の一部である不動産についても、「不動産の一切を、相続させる」というように抽象的な書き方でも問題ありません。

同様に、遺産の一部である金融資産についても、「預貯金等金融資産の一切を、相続させる」と記載しても問題ありません。

尚、相続人以外の方に対しては、「不動産の一切を、包括して遺贈する」と記載します。

遺言者が多くの不動産、預貯金等金融資産を所有している場合、何か一つ抜けてしまい、後々問題になるくらいなら、「不動産の一切を、相続させる」、「預貯金等金融資産の一切を、相続させる」と抽象的な書き方のほうが良いです。

また、自筆証書遺言を作成した後に、不動産、預貯金等金融資産が増えた場合も、新たな遺言書を作成しなくても対応できます。

遺言書に個別の不動産を記載して、遺言後に、この不動産を売却して新たな不動産を購入した場合には、新たな不動産については遺言がないことになってしまい、遺言者様の想いを実現できなくなってしまいます。

預貯金等金融資産についても同様です。個別の預貯金を記載して、遺言後に、この預貯金を解約して新たな預貯金の口座を開設した場合、新たな預貯金については遺言がないことになってしまいます。

「遺言者名義の預貯金」との記載はおススメしません

「私は、私名義の全ての預貯金等金融資産の一切を私の長男伊藤一郎(生年月日)に相続させる」と記載すると、遺言者様が他人名義で有する預貯金は遺言者様名義ではないので、この分は長男に相続されないことになってしまいます。

そうならないために「私は、その有する預貯金等金融資産の一切を、私の長男伊藤一郎(生年月日)に相続させる」と記載すべきです。

相続人には「相続させる」と明確に記載します

「取得させる」「承継させる」「譲る」「託す」「任せる」「あげる」「与える」などの曖昧な表現は避けましょう。

また、「包括して相続させる」と記載すると包括遺贈と混同される恐れがあるので、このような記載は避けましょう。

遺言書を作成しても、ご自身の財産をどのように使用、処分するかは自由です

遺言書を作成すると、その遺言と矛盾する財産処分はできなくなると思い込んでいる方もいらっしゃいますが、遺言者の方がご自身の財産をどのように使用、処分するかは自由です。

遺言書の内容に縛られることはありません。

例えば、「長男に土地・建物を相続させる」と遺言書に記載しても、土地・建物を売却することは可能です。

この場合、「長男に土地・建物を相続させる」という遺言が撤回されて、遺言執行ができなくなるだけです。

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1 自筆証書遺言書の書き方(基本型、遺産の全部を相続させる、遺産の全部を包括して遺贈する遺言)

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5 建物と借地権を相続させる自筆証書遺言書の書き方

6 増築部分が未登記の建物を相続させる自筆証書遺言書の書き方

参考文献

自筆証書遺言書保管制度のご案内(法務省民事局、令和5年1月作成)

遺言等公正証書 作成の知識と文例(麻生興太郎著、日本法令、令和5年5月10日)

行政書士のための相続実務マニュアル(初見 孝著、三省堂書店/創英社、令和4年9月30日)